角館散策記

      第三章   かくのだて

             この物語はフィクションであり登場する人物などは実在の人物とは関係ありません

 ふと、気がつくと、暖かい布団の中にいた。 づきづきと痛む頭に顔をゆがめながら身体を起こしあたりを見回すと、張り替えたばかりの障子と襖の様子から、 歴史ある建物と感じていた。そこへ突然、奥の方から木魚の音が聞こえてきたのである。ポク、ポク、 ・・・・・・・・・そのあとからお経のような唸り声が聞こえてきた。そうか、ここはお寺さんか!でもどうして?。いったいいつからここに居るんだろう、 痛む頭でしばらく考えているところえ、ここの住職らしいお坊さんの足音が聞こえてきたので、あわてて布団にもぐりこんだ。畳のきしむ音が大きくなっくると美味しいご飯の匂いも一緒についてきた
 「今日で4日目じゃ、まだ目がさめんのかのう、顔色もよくなってきたし、 熱もさがったのにのう
 坊さんなのか、ひとりごとをつぶやいていた。そうか、もう4日も過ぎたのか、どうりでお腹のなかが空っぽなのが、さっきの粥の匂いではっきりわかったみたい。どうしょうかな目をあけようかな、こんな時どうすればいいのかな?でも、どうしょうもなくただ、だまって寝たふりをしているだけだった。もう少し状況がわかってか ら、興奮している自分がもう少し落ち着いてから起きてもいいだろうと思った
 「まだ、起きそうもないのう、ちょっと出かけてくるかのう、粥は置いとこう留守の間に目が覚めたら腹がすいとるとのう、食べたくなるじゃろそういって粥を置いて出て行った。
 目が覚めてから、 だいぶ時間がたって落ち着いてあたりを見回しておおよその状況が判ってきた。先ほどから鼻先をくすぐっている粥の匂いが私を誘っていた。とうとう、誘惑にまけ和尚の情けに甘えることにした。少々粥はさめていたが心地よく喉をうるおした。 まだ、身体のあちこちが痛むが粥が喉をとうるたび痛みを忘れていった。 いま確かに活きている生きている実感がもやもやと沸いてくる感じがしてきた。その時突然和尚が部屋に入ってきた。すっかりあわてた私を、穏やかな顔で、
 「おう、気がつきましたのう、まあまあ、そんなに恐縮しないで、困ったと きお互い様といいましてのう、これも仏様の導きじゃでのう
茶碗を置いてお礼を言おうとする私を制して。
 まあまあ、まずは粥を食べなさいゆっくり食べなさいよ、いま、温かい  お茶を持ってきましょう、気がついて本当に良かった、うん、本当に良  かったのう、これで安心だのうと言いながら和尚は部屋をでていった
 和尚が出ていったあと、残りの粥をかっ込みこれからどうすれば良いのか、考えようとしていたが、さっき目が覚めたばかりなので考えようとしてもいっこうに思い浮かばずただどうしようと思うばかりで、いらいらするばかりであった。しばらくするとお茶を持った和尚が入ってきた
 さあ、お茶ですよ、これで少し落ち着くことができるかのう
ただ、だまっている私に和尚はやさしい笑顔で、
 「まあ、しばらくゆっくりしていきなさい、これも仏様のお導きじゃのう
 それから2〜3日たって、私が縁側に座っていると小坊主が茶を持ってきた。 お饅頭が1個ついてきた。お茶をすすり、饅頭をほうばりながら、縁側から見える杉林の山々がすがすがしく見えるのでしばらくそうしていると和尚がきた
 「だいぶ元気になったのう、食欲もあるしもう大丈夫じやのう
 私も自分が元気になったこと、いろいろとお世話になったことにたいしお礼を言い、近いうちたび立つことを告げると。和尚は。
 「まあ、まあ、そうあせらずにゆっくりなさい。この角館もいいところじゃ  からゆっくり見物してゆくといい、とにかく体を大事にしなさい。 これから 先のことはじっくり考えても遅くはないけんゆっくり考えようかのう
 まだ、立ち上がるとめまいがするがどうにか歩けるようになった私をなだめるように、本堂に向かった。いろいろと考えてはいるが、挫折したショックが大きいのか正直いってこれからどう進むのか、なにをすればいいのか旅をしながら考えてはいたが、局なにも決まらずもやもやした状態が続いていただけなのである。本堂での御勤めをしている和尚の後ろ姿を見ながら、合掌していると
 「このお経の本を渡しときますからいっしょに唱えましょう、このお経が  唱えられるようになったら、あなたのこれからが少しは見えてくるでしょ う」
 と言って、和尚はお経を唱え始めた。 9月7・8・9日の3日間、町を一色に染めあげる祭り絵巻は、山車を曳く若者はもちろ、祭り見物の人も魅了せずにはいません。大置山、人形、おやまばやし、手踊りの一つをとっても、長い伝統と庶民の守り育てた結晶が現代まで生きているのです。又曳山には“飾山(おやま)ばやし”の囃子方が乗り、舞台では秋田美人のメッカ、北仙北地方の20歳前の踊り子が“手踊り”を踊ります。 
 飾山ばやしは、大別して行進曲、奉納の踊り、風流踊りに分けられ、風流踊りは秋田民謡を取り入れたものがたくさんあります。勇壮な祭りが終わり、町並みが静かになったころ、私もどうにか歩けるようになるまで快復していた。和尚から借用した着物に下駄を突っかけ、まだ日の高い午後町並みを散歩していた。和尚から聞かされていた武家屋敷が急に見たくなって、ゆっくりと歩きだしていた
 今思うとたった15分位の道のりが何時間かかったのか、思い出せないくらいの時間をかけて武家屋敷にたどりついていた。日除けの広場を過ぎ、小野田家、河原田家を過ぎるあたりに、和尚に聞いている金田医院が有ったので、お世話になった院長に元気なったこと、お世話になったことなどにたいしお礼を言いたくて、受け付けの娘さんに合いたい旨を伝えお願いした。しばらくすると、ちょっと小太りでカップクのいい中年の医師が待合室に入ってきた。
 「いよう!元気になったな、わはははは」と豪快に笑い飛ばした。
 「よかった、よかった。で名前はなんと言う」
 そういえば、私はまだ、誰にもまだ、自分の名前を言ってなかったのだ和尚も聞こうともしなかったので、つい、言いそびれていたのだった。
 「その節は、いろいろとお世話になりまして、有難うございます。私は小 椋と申すもので、高校三年生です私はそれだけいって頭をふかぶかとさげた。
 「小椋君か、若いから快復も早いな。でもね、絶対無理は禁物だな」
 「なんたって、肺炎を患ってうなっていたんだから、十分体力をつけなく てはいかん」
 「和尚にだいぶ世話になったが、気兼ねなどいらん、和尚はできた和尚 だ。」
 「迷惑をかけたついでに、とことん迷惑をかけちゃえ。和尚はそれでよろ こぶだろうよ」
 「そうだ、私の娘を紹介しよう」
 そういいながら一旦奥へ行き、丸顔のほちゃっとした口元の笑みが可愛い、女の子を連れてきた。
 「娘の喜美枝です。この町を案内させましょう。気晴らしになるし運動に もなる」「明日からでも来なさい
 といって仕事中だから失礼するといって、診察室へ入ってしまった。それからというものは、喜美枝さんの時間を許す限り、角館を案内してもらうことになった。

 
          
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